スポーツ・膝関節センター開設

スポーツ・膝関節センターでは、スポーツ愛好家からプロのトップアスリートまでスポーツレベルを問わず、スポーツを愛する患者さんの障害・外傷についての相談に応じます。当センターでは、プロサッカーチーム、福島ユナイテッドFCのメディカルサポートを行っております。公式戦全試合への帯同はもちろんのこと、トレーニング中の怪我の際には、迅速に検査、治療を行っています。トップアスリートの診療にあたるには、特に重大な責任を感じますが、手術や保存的療法で治療・改善した選手が活躍し勝利を共有できることに、大きなやりがいを感じております。
スポーツ・膝関節外傷として頻度の高い前十字靱帯損傷や半月板損傷など、保存的治療では改善が望めない疾患に関しては、早期に手術を行っております。スポーツ復帰時期に関しては、筋力の回復はもちろんですが、手術が終わってからの日数も大事な要素です。手術が必要と判断されれば、早期に手術をすることが望ましいため、当センターでは1日でも早く手術を行うことを目指しています。手術内容としましても、解剖学的3重束十字靱帯再建術やfibrin clotを用いた半月板縫合術等、国内外で比較しても見劣りしない最良の方法で行っております。全ては、患者さんが、早期に安全に復帰するために行っているものであります。当センターには、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー3名、福島県体育協会認定アスレティックトレーナー1名、公認スポーツ栄養士2名が常駐しており、アスリートの競技スポーツ復帰を強力にバックアップすることが可能です。
また、当センターでは、スポーツによる障害・外傷だけではなく、変形性膝関節症に対する治療にも力をいれています。膝周囲の加齢や使いすぎによる症状に対しては、まず、第一に手術以外の方法で加療していくことが多いようです。ヒアルロン酸の注射やPRP(多血小板血漿)注射、運動療法等の保存的治療を行います。しかし、それでも症状の改善が乏しい場合には、手術を行っていきます。
それぞれの疾患に関して、当センターで行っている治療を紹介させていただきます。

前十字靱帯損傷

前十字靱帯損傷は、バスケットボール、サッカー、ハンドボール、バレーボールなどのスポーツ外傷として生じることがほとんどです。受傷直後は、膝関節内に血液が貯留し、痛みのためにスポーツに復帰することができません。しかし、3週間程度経過すると、痛みも軽快し、少しずつスポーツに復帰することもできそうな感じまで回復しますが、元のプレーまで復帰できることはありません。切り返しの動作やジャンプの着地などで、膝に力が入った時に、膝崩れを起こしてしまいます。そのため、前十字靱帯を損傷してしまった場合には、手術が必要となります。診療ガイドラインでは、受傷後3カ月以内での手術が推奨されていますが、合併損傷や早期復帰の観点からは更に早期の手術が望ましく、当センターでは、診断確定後1ヶ月以内に手術を行っております。
手術方法は、スポーツの種類によりますが、解剖学的2重束前十字靱帯再建術、解剖学的3重束前十字靱帯再建術、解剖学的長方形骨孔前十字靱帯再建術を行っております。また、成長軟骨が残っているような小児の場合には、成長軟骨を傷つけない特殊な手術機器を用いて手術も行っております。
スポーツへの復帰は、約6~9ヶ月での復帰を目標にアスレチックリハビリテーションを行います。

解剖学的2重束前十字靱帯再建術(遺残靱帯温存)解剖学的3重前十字靱帯再建術(遺残靱帯温存)解剖学的長方形骨孔前十字靱帯再建術

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半月板損傷

半月板損傷は、スポーツによる外傷性半月板損傷と、加齢や使いすぎによる変性損傷に分けられます。スポーツによる外傷性半月板損傷の場合には、手術が必要になることが多いです。半月板が切れた状態でスポーツを継続した場合には、半月板損傷に起因する痛みや水腫だけでなく、二次性の軟骨損傷も来しうります。手術は半月板部分切除と半月板縫合術がああります。当センターでは半月板部分切除はほとんど施行しておらず、縫合術を選択しております。自分の血液から作成するfibrin clotを用いることで、半月板が治癒しやすくなり、また、しっかりとした技術で縫合することで、半月板損傷由来の症状の緩和と半月板の機能(クッションの役割など)の回復が望めます。
スポーツへの復帰に関しては、手術後約5カ月での復帰を目標にアスレチックリハビリテーションを行います。
加齢や使いすぎによる、変性損傷に関しては、まず、保存的な治療を行っています。それでも改善が乏しい場合には、半月板の修復に加えて、膝周囲の骨切り術を行っています。修復した半月板に過度の負担がかからないように、骨を切って、体重のかかる部分を変えます。大腿骨や脛骨、またはその両方を切って配列を変える必要がある場合もあります。

半月板損傷

 

 

 

 

 

 

 

膝蓋骨脱臼

初回の膝蓋骨脱臼の場合には、保存療法を行うことが多いです。しかし、元々の脱臼素因(身体が極端に柔らかい、骨の形が変わっている等)が強い場合や、繰り返し脱臼してしまう場合には手術が必要になります。当センターでは、膝の屈筋腱を用いた内側膝蓋大腿靱帯再建術を主軸に、脛骨粗面の骨切り術(骨の形が変わている患者さん)を併用する等して手術を行っています。成長軟骨が残っているような小児の場合には、成長軟骨を傷つけない特殊な方法で手術を行っております。
スポーツへの復帰は、約5~6ヶ月での復帰を目標にアスレチックリハビリテーションを行います。

膝蓋骨脱臼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外傷性軟骨損傷

加齢や使いすぎによるものではなく、外傷に起因する軟骨損傷に対しては、手術が必要になることが多いです。剥がれ落ちてしまった軟骨が再利用可能であれば、元の位置に戻して修復します。剥がれ落ちてしまった軟骨が再利用可能であれば、元の位置に戻して修復します。軟骨の再利用が難しい場合には、体重のかからない部分から軟骨と骨を一緒に採取して移植する、自家骨軟骨柱移植術を行います。
自家骨軟骨柱移植術では対応できないような大きな軟骨欠損の場合には、自家培養軟骨移植術も行っています。

外傷性軟骨損傷

 

 

 

 

 

 

変形性膝関節症

加齢や使いすぎによるものがほとんどであり、まず、保存療法を行います。それでも症状が改善しない場合には手術が必要になります。大きく分けて3種類の手術を使い分けております。

  • 膝周囲骨切り術
    比較的若年者で、活動レベルが高い患者さんで、変形の程度が軽い場合に行っています。変形のある傷んだ部分から、正常な部分に体重が移るように大腿骨や脛骨、または、両方の骨切りします。骨切り後には、金属の板で固定します。

ロボティックアーム支援システム「Makoシステム」導入

本システムは、CTによる3次元画像データを元に綿密に治療計画を立てて1mm単位、1度単位で狙った骨切りが可能になりました。計画外の動きを制御することで、膝関節周囲の組織を痛めることなく骨を切ることができます。当センターでは、人口膝関節置換術を熟知した医師が、ロボティックアーム支援システムを使用することにより、更に安全かつ正確な手術が可能になっています。
Makoシステムの詳細はこちらをご確認ください。

  • 単顆型人口膝関節置換術
    比較的高齢で、活動レベルがそれほど高くなく、変形の程度が軽い場合に行っています。内側、もしくは外側のみを人工関節で置換する手術であり、身体にかかる負担は軽くなります。Makoシステムを用いることで、更に身体にかかる負担が軽減します。
  • 人口膝関節全置換術
    変形の程度が重症な場合に行っています。内側・外側・お皿の関節を全て人工関節に置換します。O脚やX脚の膝は真っ直ぐになり、歩行時の痛みが改善します。Makoシステムを用いることで、余分な剥離操作が不要となり、身体にかかる負担が軽減します。

Mako