痙縮(けいしゅく)とは

痙縮症状①

例えば脳卒中後に運動麻痺が残った場合、患者さんの日常生活に大きな支障や苦痛を来します。
痙縮とは、脳卒中や頭部外傷、低酸素脳症などいろいろな原因で運動麻痺が生じた後に起こる障害で、筋肉の異常なツッパリのことです。
筋肉が緊張しすぎると、手足が動きにくくなり、手指が握ったまま動かなかったり、肘や膝が曲がってしまったまま伸びなかったり、上肢が胸にくっついたままになったりします。
また足先が伸びて裏側に曲がってしまったり、歩行時や安静時に足が勝手に動いたりしてしまいます。その状態が長期間持続すると痛みが出たり、 関節の動きが制限されてリハビリが困難になったり、歩行が困難になるなど日常生活に支障が出てきます。
痙縮症状②
さらに痙縮が高度になると関節が変形してしまう拘縮(こうしゅく)という状態になったり褥瘡(じょくそう)が出来てしまったりします。 食事、排せつ、入浴、更衣など自分自身の日常生活が妨げられるだけでなく、自信喪失や自己イメージ悪化を気にしたり、介護人の負担も高度になったりします。

そんな痙縮の治療法の一つに「ボツリヌス療法」があります。

ボツリヌス療法とは

ボツリヌス療法

ボツリヌス菌から産生されるボツリヌス毒素は、神経筋接合部に作用して筋の過度な収縮を抑える効果があります。
上肢の痙縮では肩関節の内転・内施、肘関節の屈曲、 手関節・指の屈曲。下肢の痙縮では股関節の内転・内施、膝関節の進展、足関節の底屈内反を呈することが多いです。
注射(施注)することで、手足の筋肉が柔らかくなり動かしやすくなり、更衣、移乗、歩行などの日常生活が行いやすくなるほか、 関節が動かしやすくなるため、手のひらや脇の下、陰部などの清潔を保ちやすくなったり、痙縮による痛みが軽減したりします。

効果①効果②効果③

まず、治療の前に診察を行い対象となる筋肉の痙縮のパターンを調べ、目的筋と投与量を決定します。
上肢では最大240単位、下肢で300単位、上下肢同時に施注する場合には最大360単位まで投与可能です。
効果は3ヶ月~4か月持続しますが、その後は徐々に効果が薄れてくるため、再度施注が必要となります。

スケジュール表

痙縮で困っている人、悩んでいる人、実際に苦しんでいる患者さんが地域には大勢いらっしゃるのではないでしょうか?
当院の脳神経外科ではこのボツリヌス療法を施行しております。ぜひ痙縮でお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
ボツリヌス療法はボツリヌス製剤の安全性及び有効性を理解して、その施注手技に関する講習・実技セミナーを修了した専門の医師のみが施注 出来ることになっていますので、安心して治療を受けられます。

ボツリヌス療法による副作用について

ボツリヌス療法を受けた後に副作用として次のような症状があらわれることがあります。
これらの症状の多くは一時的なものですが、症状があらわれたときは医師に相談してください。

  • 注射部分が腫れる、赤くなる、痛みを感じる。
  • 体がだるい、力が入りにくい、立っていられない。

また、ごくまれに次のような症状が出ることがあります。
このような症状が出たら、すぐに医師に相談してください。

  • 吐き気
  • 呼吸が苦しい
  • 全身が赤くなる
  • 物が飲みにくい

国内臨床試験における副作用発現率は上肢が16%、下肢が15.6%です。主なものは脱力(2.83%)、CK・CPK上昇(2,83%)でした。
当院では治療を開始してから1年が経過し、これまで30名の患者さんに対し合計61回施注を行いました。年齢は5歳の小児から88歳までで平均 66歳です。
発症してから施注までの期間は半年から最大23年でした。

外来受診の流れ

外来受診の流れ図

外来受診後の流れ

  1. 予約日に脳神経外科外来での診察
  2. 血液検査、場合により脳CT、心電図などの検査
  3. リハビリテーション科での診察、施注前の痙縮の評価
  4. 施注日の決定、院内でのリハビリスタッフなどと施注前検討
  5. 上肢だけなら外来、下肢を施注する場合は最初は入院(1週間程度)、その後外来に移行

ボツリヌス療法についてQ&A

ボツリヌス療法についてのQ&Aをまとめましたので、下記をご確認ください。

ボツリヌス療法についてQ&Aはこちら [PDFファイル/92KB]